48階の集合住宅のコモンスペースをどのような空間として位置付けるのか。
本計画におけるコモンスペースデザインは、北海道、そして札幌の風土や環境特性を読み解くことから始めた。パリ事務所と東京事務所、札幌の現場を行き来する中で、パリの北緯49度よりも札幌は北緯43度と低緯度でありながら寒流と寒気団による雪は決定的な違いであった。降り続く雪や降り積もる雪、その結晶を表現した孔から注ぎ込まれる無数の光が人々を優しく包み込み、雪や自然を感じることができる空間とした。また、今後、人口減少による地域活力の低下が懸念される札幌において、世代を超えて地域住民が集い交流できる場を創造することで、活気あふれるまちづくりの一翼を担い、再開発が進む札幌市を建築デザインの立場から創造性豊かな魅力的な街へと、牽引する存在となることを目指した。
48階建てのタワーマンションの屋上ヘリポート。北海道最高層だけに札幌市内、西側に連なる山脈、北側のオホーツク海までも見渡すことができる。1階西側の道路からのエントランスが本建築物のメインアプローチとなる。4階までは商業施設が入る。吸い込まれるように真っ白な柔らかい曲面に包まれたファサードはエントランス全体を包み込みラウンジまで人々を導く。再生アルミニウムや札幌軟石を使用したエントランスからエントランスホールへとつながる。コンシェルジュカウンター前のベジェの天井の奥には広がる吹き抜けのラウンジ。ゆったりとくつろぎながら住民と地域住民のコミュニケーションの場となる。アップサイクルによる植栽など和の趣を感じながら、1階奥のエレベーターホールへとつながる。各階へのストーリーはここから繋がって繰り広げられていく。
エレベーターホールから各階へと繋ぎ、5階のコモンスペースに足を運ぶ。ガラスのパーティションで分節されたオーナーズラウンジでは住民のお客様を迎え入れるパーソナルスペースとして使用できる。ミラーに包まれたコミュニティラウンジは住民の様々な教室などの開催、会議室などに使用される明るく風通しの良い空間とした。オーナーズサロンは小さなブースに分けられ、完全に閉じた空間とならないようパーティションには無数の孔が開けられている。また緑と木など自然を感じれる空間とし、落ち着きのあるスペースとして個々の仕事や勉強など自由に使える空間とした。29階のスカイラウンジやパーティルームは、札幌の夜景を堪能でき、住民や地域住民との語らいの場となる。最後に地下1階の札幌駅から直結通路からのアクセスもバンブーや光の孔が迎え入れてくれ、曲面が連なる待合スペースでくつろぎながらパーキングの待機スペースとも兼ねる。
多様な人々を繋ぐ場所として、交流や助け合いが生まれる居心地の良い空間を目指した。大都市札幌の洗練された空間と生活の中に自然が溶け込むような空間を調和すべく、最も特徴的な環境特性である雪を感じさせるコモンスペースのあり方を検討した。孔を開けるという行為は孔を介して分節された空間をつなぎ、その内と外との関係を曖昧にする。京の町家の格子のように昼夜によって内と外の光の関係を逆転させ、外部からの視線を遮りつつ光を採り込み開放感を与える。ダブルスキンによって生じるモアレは空間に奥行きをもたらす。下に向かって細かい粒子となるよう雪の一つ一つを構成するベジェ曲線を集合体として表現した。エントランス、ラウンジなど、主要なコモンスペースに溶け込み、住まう人々の暮らしに寄り添い、受け継がれる空間とした。家具やドアハンドルの細部までパラメトリックで連なる3次曲面やベジェ、孔等の要素を用い微かな変化をもたらした。